熊谷愛子 (くまがい あいこ)
 
 大正12年(1923) 石川県生まれ。静岡県在住。  「逢」主宰・「頂点」「寒雷」
 楸邨に師事。昭和29年「寒雷」入会、同人。「頂点」同人。昭和62年「逢」創刊。 平成22年で終刊。第5回頂点賞・第53回現代俳句協会賞受賞。
 句集:『火天』『水炎』『施風』『地燭』
      原罪の股ぐら熱し実梅採り
      十二月八日かがみて恥骨あり
      ほうたるよせつせつ水も炎(ほむら)なす
      寅さんが逝く一突きのところてん
      百合反らせ妻のけぞらせ遺影かな
      
 
倉橋羊村 (くらはし ようそん)
 昭和6年(1931) 神奈川県生まれ。東京都在住。 「波」主宰
 秋桜子に師事。昭和27年「馬酔木」入会。昭和39年湘子の「鷹」創刊に参加、編集長。退会して「波」に参加。のち主宰。現代俳句協会顧問。第2回日本詩歌句大賞・第21回日本文芸大賞受賞。
 句集:『渾身』『愛語』『有時』『打坐』『幻華』   著作:『水原秋桜子』『俳壇百人上下巻』ほか多数。
     つきささる光となりて枯るるなり
     かなかなや陰画となりし兵の列
     晩年の全景ならむ裸の木
     はみ出してゐてもわが道西行忌
     遊び紐がよし甚平も晩年も
     目を瞑りても凍鶴とはなりきれず
    
 
黒田杏子 (くろだ ももこ)
 昭和13年(1938) 東京都生まれ。千葉県在住。 「藍生」主宰・「件」
 山口青邨に師事。元「夏草」同人。平成2年「藍生」創刊.夏草新人賞・夏草賞・第6回現代俳句女流賞・第5回俳人協会新人賞・第35回俳人協会賞・第1回桂信子賞・第45回蛇笏賞受賞。
 句集:『木の椅子』『水扉』『一木一草』『花下草上』『日光月光』『銀河山河』  著作:『今日からはじめる俳句』『あなたの俳句づくり』『現代俳句鑑賞』『俳句をはじめてみませんか』『証言 昭和の俳句』『金子兜太養生訓』『俳句列島日本すみずみ吟遊』『手紙の歳時記』『暮しの歳時記』ほか
       白葱のひかりの棒をいま刻む
       磨崖佛おほむらさきを放ちけり
       縄とびの子が戸隠山へひるがへる
       能面のくだけて月の港かな
       まつくらな那須野ケ原の鉦叩
       いちじくを割るむらさきの母を割る
       涅槃図をあふるる月のひかりかな
       鶴来たるかの世へ発ちし友の数


 
草間時彦 (くさま ときひこ) 
大正9年(1920)~平成15年(2003)83歳。 東京都生まれ。 
 秋桜子,波郷に師事。元「鶴」同人。俳句文学館の建設に尽力、俳人協会理事長を務めた。俳人協会顧問。第14回詩歌文学館賞。第37回蛇笏賞受賞。
 句集:『中年』『淡酒』『桜山』『朝粥』『夜咄』『典座』ほか
      冬薔薇や賞与劣りし一詩人
      さうめんの淡き昼餉や街の音
      甚平や一誌持たねば仰がれず
      年寄は風邪引き易し引けば死す
      桜咲くを病みて見ざりき散るときも

 
楠本憲吉 (くすもと けんきち)
 大正11年(1922)~昭和63年(1988)65歳。 大阪府生まれ。東京都在住。
 草城,赤黄男に師事。草城を擁し「まるめろ」創刊。また「慶大俳句」創刊。草城の「青玄」同人.「俳句評論」創刊同人。「野の会」創刊主宰。※慶應義塾大法学部・國學院大大学院(日本文学)博士課程出身
 句集:『隠花植物』『弧客』『楠本憲吉全句集』   著作:『戦後の俳句』ほか
      弾き出すバッハ露びっしりと女学校
      汝が胸の谷間の汗や巴里祭
      夏霧やしなやかに行く一馬身
      背後より薔薇の一撃喜劇果つ
      沙翁忌の生き永らえし男かな
 
 
久保純夫 (くぼ すみお)
 
 昭和24年(1949) 大阪府生まれ。 「儒良」
 鈴木六林男に師事。昭和46年「花曜」入会・ 編集長を長年務めた。平成18年同人誌「光芒」を創刊するも10号で終刊。平成25年「儒良」創刊。第15回六人の会賞・第42回現代俳句協会賞受賞。 
 句集:『瑠璃薔薇館』『水渉記』『聖樹』『熊野集』『比翼連理』『光悦』
      青熊野精虫騒ぐところかな
      麦踏むと天皇制が立ち上がる
      帝国の梯子しずかに朽ちゆけり
      あまがみのあぶなうえのあとあまるがむ
      肉体を水の途中と想いけり

 
 
久保田慶子 (くぼた けいこ)
 大正13年)1925)~平成16年(2004)79歳。  東京都生まれ。 「寒雷」・「笙」主宰
 加藤楸邨に師事。「寒雷」に入会,同人に。同人会副会長を務める。夫は俳人の久保田月鈴子。第2回サンケイ俳句賞。第30回現代俳句協会賞受賞。
 句集:『不思議』『九月』『笙』
     母は歌ふ真赤な夕日の満州を
     月光に入歯屋の棚不思議かな
     考える葦ともならず鬼やらふ
     


 
久保田万太郎 (くぼた まんたろう)
 明治22年(1889)~昭和38年(1963)73歳。 東京生まれ。  
 松根東洋城に師事。慶應三田俳句会に参加。昭和9年いよう句会を結成、晩年も指導を続けた。戦後昭和21年「春燈」創刊主宰。小説家。戯曲作家。劇団「文学座」の結成に携わる。日本演劇協会会長・日本芸術院会員・文化功労者。第4回菊地寛賞・NHK放送文化賞・読売文学賞・文化勲章受賞。*慶應義塾大学文学科出身
 句集:『道芝』『草の木』『流寓抄』『久保田万太郎全句集』ほか 著作:『久保田万太郎全集全18巻』他多数。
      神田川祭りの中をながれけり
      竹馬やいろはにほへとちりぢりに
      芥川龍之介仏大暑かな
      おもふさまふりてあがりし祭かな
      時計屋の時計春の夜どれがほんと
      何もかもあつけらかんと西日中

      湯豆腐やいのちのはてのうすあかり
      
  
 倉田紘文 (くらた こうぶん) 
 昭和15年(1940)~平成26年(2014)74歳。 大分県生まれ。 「蕗」主宰
 高野素十に師事。昭和34年「芹」入会、同人。昭和47年「蕗」創刊。別府大学名誉教授。※大分大学学芸学部出身。
 句集:『慈父悲母』『光陰』『無量』『都忘れ』『帰郷』『水輪』  著作:『高野素十の世界』ほか
       秋の燈にひらがなばかり母の文
       螢待つ闇を大きく闇つつむ
       高き木の高きを吹きて春の風


 
栗林千津 (くりばやし ちづ)
 明治43年(1910)~平成14年(2002)92歳。 栃木県生まれ。 「船団」「小熊座」
 昭和32年「みちのく」入会。昭和39年「鶴」入会、のち「鷹」などを経て鬼房の「小熊座」同人。「船団」にも参加。第33回現代俳句協会賞受賞。
 句集:『のうぜん花』『命独楽』『水の午後』『火を枯れを」』『祈り』『幌』『羅沙』『蝶や蜂や』『栗林千津句集』『鮫とウクレレ』ほか
      鬼灯が山川を超え行く日なり
      梢にさす林檎の輪切り魔法の木
      ひたたきは姉よ兄よと屈折す
      春は名のみ帆の如く来て埋骨す
      夏葱は遺書の余白に似てゐたり

 
 
栗林一石路 (くりばやし いっせきろ)
 明治27年(1894)~昭和36年(1961)66歳。 長野県生まれ。
 井泉水に師事。句作でファシズムを批判。新興俳句弾圧事件に巻き込まれ終戦まで拘禁される。新俳句人連盟を結成,初代幹事長。
 句集:『シャツと雑草』『栗林一石路句集』
      シヤツ雑草にぶつかけておく
      屋根屋根の夕焼くるあすも仕事がない
      なにもかも月もひんまがつてけつかる
      
      父祖の地に杭うちこまる脳天より
      ながい戦争がすんだ簾をかけた

 
 
隈 治人 (くま はると)
 大正4年(1915)~平成2年(1990)74歳。 長崎県生まれ。
 「かびれ」に学ぶ。「海程」創刊同人。「土曜」創刊主宰。第12回現代俳句協会賞受賞。*長崎医大附属薬学専門部(現長崎大学)出身
 句集:『隈治人句集』『原爆百句』『柔和な雲』ほか
      冬田の謀議一撃で足る頭寄せ
      雲が首灼く浦上花をもつと蒔こう
      埋没の一燭めざす枯野を負い
 
 
栗生純夫 (くりゅう すみお)
明治37年(1904)~昭和36年(1961)56歳。 長野県生まれ。「科野」創刊主宰。
 臼田亜浪に師事。「石楠」最高幹部のひとり。昭和21年「科野」創刊。終生実作者の立場で一茶の研究,新資料の発掘にも尽した。須坂市名誉市民。
 句集:『山帰来』『大陸諷詠』『山路笛』『科野路』『科野』ほか
     炭馬のおほきな顔へ雨のつぶ

     指すもの何ならん橇逸り出
     しんしんと柱が細る深雪かな
     稲架解けばすなはち千曲奔騰す
     田植うるは土にすがれるすがたせり
     
      

 
桑原三郎 (くわばら さぶろう) 
 昭和8年(1933) 埼玉県生まれ。 「犀」代表
 赤尾兜子に師事。「馬酔木」「野火」に投句。中断後昭和46年「つばさ」創刊に参加、編集人。「俳句評論」,「渦」同人を経て昭和57年「犀」創刊。第27回現代俳句協会賞・第4回六人の会賞受賞。
 句集:『春亂』『花表』『龍集』『晝夜』『魁星』『不断』『夜夜』
     初蝶に沈黙術を用ゐけり
     補陀落のそらうすぐらきさくらかな
  
     倒れしは一生涯のガラス板    
     たけなはの春や昔の歯磨粉
     長生きの象を洗ひぬ天の川
 
栗田やすし (くりた やすし)
 昭和12年(1937)旧満州に生れる。愛知県在住。  「伊吹嶺」主宰。
 沢木欣一、細見綾子に師事。昭和33年「岐大二十才句会」で俳句を始める。昭和41年「風」入会。同人を経て平成10年「伊吹嶺」創刊。第15回俳人協会評論賞・第49回俳人協会賞受賞。
 句集:『伊吹嶺』『遠方』『霜華』『海光』 著作:『河東碧梧桐の基礎的研究』
     流燈会われも流るる舟にゐて
     滝凍てて全山音を失へり
     寒月が鵜川の底の石照らす
 
 
九鬼あきゑ(くき あきえ)
 昭和17年(1942)静岡県生れ。 「椎」主宰・「寒雷」
 原田喬、加藤楸邨に師事。昭和41年原田喬に俳句学ぶ。昭和42年「寒雷」入会。昭和56年同人。昭和50年「椎」創刊に参加。編集に携わる。平成11年主宰を継承。
 句集:『海月の海』『湾』『夭夭』
     紅蓮天上をいま櫂の音
     朱の扉押したる先が春の山
     音たてて大山蓮華崩れけり
 
 
黒川悦子 (くろかわ えつこ)
 昭和22年(1947)福岡県生れ。 「ホトトギス」
 稲畑汀子に師事。昭和60年「ホトトギス」に入会、のち同人。田畑美穂女の指導も受ける。平成7年「円虹」創刊に参加。
句集:『』
      いつ雪に変はる雨やも東山
      チューリップしどろもどろに散りゆける

俳句舎の俳人名鑑

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