藤田湘子 (ふじた しょうし)
 大正15年(1926)~平成17年(2005)79歳。 神奈川県生れ。 「鷹」主宰
 水原秋桜子に師事。「馬酔木」投句。23歳で同人。編集長。昭和39年「鷹」を創刊、代表同人となる。のち、馬酔木同人を辞退し「鷹」の主宰となる。現代俳句協会幹事長、副会長を務めるが、昭和58年辞任。馬酔木新人賞・第1回馬酔木新樹賞・昭和32年第4回馬酔木賞・第15回詩歌文学館賞受賞。
 句集:『途上』『雲の流域』『白面』『狩人』『春祭』『一個』『去来の花』『黒』『前夜』『神楽』『てんてん』『藤田湘子全句集』  著作:『俳句全景』ほか。
     愛されずして沖遠く泳ぐなり
     口笛ひゆうとゴッホ死にたるは夏か
     音もなく紅き蟹棲む女医個室
     種痘して鏡から出る夜のひかり
     枯山に鳥突きあたる夢の後
     筍や雨粒ひとつふたつ百
     揚羽より速し吉野の女学生
     うすらひは深山へかへる花の如
     湯豆腐や死後に褒められようと思う
     あめんぼうと雨とあめんぼうと雨と
     天山の夕空も見ず鷹老いぬ
     一塊のででむし動くああさうか
          
   
文挟夫佐恵 (ふばさみ ふさえ)
 大正3年(1914)~平成26年(2014)100歳。 東京生れ。「秋」名誉主宰
  飯田蛇笏、龍太に師事。「雲母」同人。石原八束の「秋」創刊に参画、編集長を努める。八束没後「秋」主宰を継承。平成18年佐怒賀正美に主宰を譲る。第12回現代俳句協会賞・第7回俳句四季大賞・第2回桂信子賞・第47回蛇笏賞受賞。※旧制東京府立第五高女(現・都立富士高校)出身。
 句集:『黄瀬』『葛切』『天上希求』『井筒』『時の彼方』『青愛鷹』『白駒』
     青葉木菟おのれ恃めと夜の高処(たかど)
     炎天の一片の紙人間(ひと)の上に
     祭見にあひると亭主置いてゆく
     煤逃げの家にも世にも帰り来ず
     凌霄花(のうぜん)のほたほたほたりほたえ死
      老い払ひ死を払ひして踊りの手
     香水は「毒薬(ポアゾン)」誰に逢はむとて
     九十の恋かや白き曼珠沙華
     艦といふ大きな棺(ひつぎ)沖縄忌
      

古澤太穂 (ふるさわ たいほ) 
 大正年2年(1913)~平成12年(2000) 富山県生れ。神奈川県在住。  「道標」編集発行。 
 「馬酔木」を経て「寒雷」創刊同人.加藤楸邨に師事。秋元不死男の推薦で新俳句人連盟に参加、のち委員長。「道標」創刊のち主宰。第32回横浜文化賞・多喜二・百合子賞受賞。*旧制東京外国学校専修科ロシア語科出身
 句集:『三十代』『古沢太穂句集』『火雲』『捲かるる鴎』   
      ロシヤ映画みてきて冬のにんじん太し
      啄木忌春田へ灯す君らの寮
      巣燕仰ぐ金髪汝(なれ)も日本の子
      白蓮白シャツ彼我ひるがえり内灘へ
      雪に逢いえて五辨うるめる白椿
     

深見けん二 (ふかみ けんじ) 
 大正11年(1922) 福島県生れ。埼玉県在住。  「花鳥来」主宰・「珊」
 虚子、青邨に師事。 「ホトトギス」「珊」「屋根」同人。「花鳥来」創刊主宰。俳人協会顧問。第31回俳人協会賞・第21回詩歌文学館賞・第13回山本健吉賞・第48回蛇笏賞受賞。
 句集:『父子唱和』『雪の花』『星辰』『花鳥来』『余光』『日月』『水影』『蝶に会ふ』『菫濃く』『夕茜』  著作:『折にふれて』『深見けん二俳句集成』ほか
      人ゐても人ゐなくても赤とんぼ
      雨かしら雪かしらなど桜餅
      ちちははも神田の生れ神輿舁く
      先生は大きなお方龍の玉
      ゆるむことなき秋晴の一日かな
      人生の輝いてゐる夏帽子
      こまごまと大河の如く蟻の列
      板の間を大地と踏みて初稽古
      胸像のはやくも馴染む茂りかな

 
福田甲子雄 (ふくだ きねお)
 昭和2年(1927)~平成17年(2005)77歳。 山梨県生れ。 「白露」同人
 飯田蛇笏、龍太に師事。昭和22年「雲母」入会. のち編集同人。雲母終刊後、「白露」創刊に尽力。第5回山盧賞・第38回蛇笏賞・第4回鬣TATEGAMI俳句賞受賞。
 句集:『藁火』『青蝉』『白根山麓』『山の風』『盆地の灯』『草虱』『師の掌』『福田甲子雄全句集』  著作:『蛇笏・龍太の山河』ほか
     蜂飼の家族をいだく花粉の陽
     牛の眼が人を疑ふ霧の中
     生誕も死も花冷えの寝間ひとつ
     ふるさとの土に溶けゆく花曇
     稲刈つて鳥入れかはる甲斐の空
     春雷は空にあそびて地に降りず
     わが額に師の掌おかるる小春かな
     

 
福田蓼汀 (ふくだ りょうてい)
 明治38年(1905)~昭和36年(1988)82歳。 山口県生れ。東京都在住。  「ホトトギス」・「山火」主宰。
 ホトトギス同人。「山火」創刊主宰。多くの山岳俳句を詠む。第4回蛇笏賞受賞。*東北帝大法科出身
 句集:『山火』『秋風挽歌』『福田蓼汀全句集』ほか
     福寿草家族のごとくかたまれり
     くろがねの岸壁夕焼北真青
     吾子あらばかくや岳友みな日焼
     遺影探す夏帽どれもうしろ向き
     踊の手ひらひら進み風の盆

 
福田葉子 (ふくだ ようこ)
 昭和3年(1928) 東京都生れ。 「豈」「面」「夢幻航海」
 高柳重信に師事。「俳句評論」同人。
 句集:『蝉領』
     めでたけれ黄泉にて交す寒の酒
     万緑や狂いそびれて橋渡る
     墜ちてゆく形に両手あがるなり
     初明り黄泉比良坂顕(た)ち初むる
     星を仰ぎて後倒れの墓ひとつ

 
 
藤井冨美子 (ふじい ふみこ)
 昭和6年(1931) 和歌山県生れ。 「群蜂」主宰
 榎本冬一郎に師事。「群蜂」同人。のち主宰継承。群蜂賞受賞。
 句集:『海峡』『氏の神』『花びら清し』『木の国抄』『藤井冨美子全句集』
       ふるさとの寝覚め山蟻先ず黒し
       火のような白髪もあり敗戦忌
       流さるる雛海にも荒野あり
       水清し花びら清し母の膝
       人遠く木の国眩し山ざくら
      

藤木清子 (ふじき きよこ)*旧号:水南女
 生没年不詳。 「旗艦」同人。
 日野草城に師事。昭和10年代の新興俳句界随一の女流俳人として活躍。「旗艦」の巻頭作家。昭和15年創刊の「天香」に作品を発表しているが、<俳句事件>による劇的な終刊とともにこの人の行方は杳として判らなくなった。
 句集:『』
     しろい昼しろい手紙がこつんと来ぬ
     ひとりゐて刃物のごとき昼とおもふ
     戦争とをんなはべつでありたくなし
     戦死せり三十ニ枚の歯をそろへ
     
     軍用列車わが盛装の帯かたく
     

 
古舘曹人 (ふるたち そうじん)
 大正9年(1920)~平成22年(2010)90歳。 佐賀県生れ。東京都在住。 
 山口青邨に師事。 「夏草」同人。青邨没後「夏草」の代表。同人誌「子午線」を創刊。俳人協会顧問。夏草賞・第19回俳人協会賞受賞。※旧制五高・東京帝大法学部出身。
 句集:『ノサップ岬』『砂の音』『樹下石上』『青亭』『繍線菊』 著作:『甦る蕪村』『大根の葉』『乃木坂縦横』『木屋利右衛門』ほか     
      虫の戸を叩けば妻の灯がともる
      一燈に二人はさびし蕪鮓
      鉾の稚児帝のごとく抱かれけり
      畳から柱の立ちし大暑かな
      繍線菊(しもつけ)やあの世へ詫びにゆくつもり
     

深谷雄大 (ふかや ゆうだい)
  昭和9年(1934)  朝鮮生れ。北海道在住。  「雪華」主宰。
 石原八束に師事.「秋」創刊同人.「雪華」は「秋」旭川支部の会報が100号に達し誕生したものである.昭和46年秋賞・ 平成22年北海道文化賞受賞.
 句集:『裸天』『白瞑』『海の日』『明日の花』『太初』『山霊』『山麓』『端座』『六合』『深谷雄大全句集』ほか
    白瞑の自伝の荒野雪が降る
    海の雪吹きあげて聳(た)つ利尻岳
    雪無限流氷無限日さすらふ
    夜目に追ふ雪山は我が帰る方
    聾鴎のこゑなきかぎり海の雪

 
 
福永耕二 (ふくなが こうじ) 
 昭和13年(1938)~昭和55年(1980)42歳。 鹿児島県生れ。東京都在住。  「沖」「馬酔木」
 高校時代から「馬酔木」に投句。20歳で巻頭を得る。のち編集長を務めた。能村登四郎の「沖」創刊にも参画。馬酔木賞・沖賞。没後、第4回俳人協会新人賞受賞。*鹿児島大国文科出身
 句集:『鳥語』『踏歌』『散木』
     萍の裏はりつめし水一枚
     浜木綿やひとり沖さす丸木舟
     新宿ははるかなる墓碑鳥渡る
     山神の息触れて舞ふ風花か
     病めば夜の永劫かとも柿一顆


 
 
藤沢青柿 (ふじさわ せいし)
 昭和10年(1935)愛知県生れ。三重県在住。 
 昭和27年高校時代、新聞俳壇の山口誓子特選。15年後「天狼」「地表」「鷹」入会。双々子に師事。元「地表」同人。元中部日本俳句作家会会員・現代俳句協会会員.
 句集:『』
      釘を含みて夕顔の裏にゐる
      緑陰に一歩踏み入り豹変す
      さざんくわの右と左の男は舞ひ
      夜桜に一本絞めをしてをりぬ
      空蝉のしがみつきたる祖国かな
 
 
藤木倶子 (ふじき ともこ)
 昭和6年(1931)~平成30年(2018)87歳。 青森県生れ。「たかんな」名誉主宰。
 村上しゅら選の新聞俳壇で天位。昭和53年小林康治の「泉」に入会。「北鈴」「林」に投句。第1回林俳句賞で同人に。平成5年「たかんな」を創刊主宰。平成13年八戸市文化賞・第42回東北デーリー賞・平成27年青森県芸術功労賞・第10回文学の森大賞受賞。
 句集:『堅香子』『雁供養』『狐火』『竹窗』『栽竹』『火を蔵す』『淅淅』『清韻』『星辰』『無礙の空』  著作:『恋北京ー旅のこころ・季のこころ』ほか
     豪雪の雪の匂ひに囲まれる
     海近き泉に馬の来てをりぬ
     炎天のひとりに立ちて埃かな
     寝返りて秋暑の闇をうらがへす
     草螢かの世の闇も灯すべし
 
 
 
藤村多加夫 (ふじむら たかお)
 大正14年(1925)~平成23年(2011)85才。 福島県生れ。 「寒雷」
 石田波郷、加藤楸邨に師事。「馬酔木」「野火」「林苑」などを経て「寒雷」「河」「杉」の同人に迎えられる。現代俳句協会顧問。福島県文化功労者。林苑賞・第19回NHK東北ふるさと賞受賞。
 句集:『冬木』『切株は雨啜りをり』『門前小僧』
    鞦韆の視野のかぎりを焦土とす
    咳の底切株は雨啜りをり
    夜濯や逆光の母漂へり
    この生(しょう)を愛すべし鮎ほぐすべし
    通ひ夫飛雪は男のこしけり
 
 
藤原月彦 (ふじわら つきひこ)
 昭和27年(1952)福岡県生れ。千葉県在住。現在藤原龍一郎
 赤尾兜子に師事。「渦」時代に高柳重信の「俳句研究」五十句競作に第1回から佳作入賞をつづけ、この学生俳人の数々の力作に瞠目した。第3回渦賞受賞。現在歌人(藤原龍一郎)。
 句集:『王権神授説』『貴腐』ほか 歌集多数
      致死量の月光兄の蒼全裸(あおはだか)
      抱きしめて春の帆となる裸身かな
      恋は黄昏車輪の下の菫かな
      日月を数へ忘れしにがよもぎ
      ひんがしの鶴・妻・剣あかねせり
   
 
布施伊夜子 (ふせ いよこ)
 昭和13年(1938)宮崎県生れ。  「鷹」・「椎の実」代表
 藤田湘子に師事。昭和40年「椎の実」入会。同人会長、編集長を務め主宰神尾久美子の死去により代表に就く。昭和46年藤田湘子の「鷹」入会。同人会長を務めた。第1回鷹新人賞受賞。宮崎県俳句協会会長。
 句集:『花期』『荒樫』
     げんげ田に寝ころびし罪夫を亡くす
     点けてすぐ消し春燈と心づく
     恋文の末筆ながら蝌蚪のこと
     山の晴まだやはらかき腰踊る
     稚魚さへや鰭美しき冬はじめ
 
  
藤本安騎生 (ふじもと あきお)
 昭和3年(1928)~平成26年(2014)86歳。 兵庫県生れ。奈良県在住。  「運河」「晨」 
 暮石に師事。昭和54年「運河」入会。昭和57年同人。「晨」 同人。第43回俳人協会賞・第1回与謝蕪村賞受賞。※関西大学法律学科出身。
 句集:『耳石』『夢の淵』『深吉野』『高見山』     
     手を水に浸けて暮石の忌なりけり
     この世よりおもしろきかな箱眼鏡
     深吉野の瀬音高鳴る網戸かな
     これからは汝も独り雪降りつむ
     わたくしは日本人ですお元日
 
 
藤本美和子 (ふじもと みわこ)
 昭和25年(1950) 和歌山県生れ。東京都在住。  「泉」主宰。
 綾部仁喜に師事。平成2年「泉」入会。編集長を経て副主宰。平成26年4月より主宰継承。第23回俳人協会新人賞受賞。
 句集:『跣足』『天空』
      まくなぎの群はひつぱりあひにけり
      はればれと佐渡の暮れゆく跣足かな
      孤巻をしてことごとく傾ぎけり
      芋の露とどまりがたくとどまれる
      天空は音なかりけり山桜
     
 
福永法弘 (ふくなが のりひろ)
 昭和30年(1955) 山口県生れ。千葉県在住。 「天為」
 有馬朗人に師事。昭和61年松本澄江の「風の道」同人を経て「天為」に参加。
 句集:『悲引』『遊行』『福』
     ねばたまの夜がありし世の姫始
     横顔の子規にさも似し種瓢
     夭折はすでにかなはず梨の花
     ちちははの旬なる昭和福寿草
 
 
武馬久仁裕 (ぶま くにひろ)
 昭和23年(1948) 愛知県生れ。 「船団」
 小川双々子に師事。元「地表」同人。「船団」会員。
 句集:『貘の来る道』『玉門関』ほか
     地下道を無名の人となって出る
     招かれて晩夏に坐る鉄の椅子
     階段を上る人から影となり
     玉門関月は俄に欠けて出る     

俳句舎の俳人名鑑

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